「兄上
こやつらを
やっつけてよ。」
「弟が
迷惑をかけ
申し訳ない。
幼子の
云う事だ
堪忍して
やってほしい。
この通りだ。」
「全く
何が強いだ。
道場に
来ないのだって
やっぱり
臆病だからだろ。」
「嘘ばっかり。」
「あまり
云うなよ。
御家老様の
血縁だ。」
「その点は
おっかないや。」
「私は
イチさんに
身請けされた。
今こうして
外にいられるのは
その金があった
からなんだ。
過去の事だ
なんて
云う訳ない。
水に流せ
なんて
云う訳ないよ。
伝え
なくちゃって、
思ったんだ。」
「短い間
だったけど
ここにいる間は
俺は
寂しくは
なかった。」
「悪かった。
もう
疑ったり
しねえ。
でもな
銀太。
信用
なんて、
そんな
簡単に
出来るもんじゃ
ねえんだ。
場合に
よっちゃあ
俺だって
疑われる
そんな
集まり
なんだぜ?
…悪かった。」
白楽の
ひとりと
して、
あいつを
見逃しちゃ
ならねえ。
…ならねえが、
…あいつの
希望を
俺は奪った。
今
それを
また
奪い上げる事は、
俺には
出来ねえ。
お役人。
…誠を、
あんたに
託しても
いいだろうか?
つけるべき
けじめを
奴に
つけさせて
やって欲しい。
「弥一殿で
あるはず
ござらんでは
ないか。
何故
あのような
事を…」
「信じるか
信じないか
だけじゃ
ねえんだ。
政。
信じられるか、
信じさせ
られるか…
いろいろ
あるんだ。」
「帰る。
簪二本
煙管が
一本。
…今
受けてる仕事を
終わらせとか
ねえとな。」
「終わらせて
それで?
どうすんだ?」
「動く訳
ねえだろ
何
心配
してんだ。」
「おめえは
こうと決めたら
突っ走っちまう
からな
とくに
イチの事に
なったら
何しでかすか。
ひとこと
云っとか
ねえと。」
「…俺の事も
少しは
信用しろ。」
「へっ。
…準備して
待つか。」
「梅。
おめえには
絹がいるん
だからな。」
「なんだ
『釘刺したぞ』
みてえに。
…絹は
俺がいなくても
大丈夫だ。」
「縄を
ほどいて
奥に控えていろ。
その体だ
逃げられは
せん。
そうまでして
守ったって、
もう元の
居場所には
戻れないぞ。」